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□ 芸術教育
芸術教育は根本的に美的経験、すなわち美の知覚と理解に関わるものである。芸術教育の美へのこだわりと知覚的認識の発達とは密接に関係している。知覚認識のサブゴールにおいて、生徒が刺激の中から見分けて差別化し、それらの知覚を処理し精選し拡張し、さらに自然環境と作られた環境の両方に対する美的感覚を同時に獲得できるような、そうした一定の処理技術を育成することを重点に置いている。この関係は特に、美と芸術プロセスについての論議を調べてみると特に顕著である。ここでは、デザインの諸要素や基本原理を知ることの重要性を強調している。
中心となるデザインの諸要素には、質感、色、ライン、形、およびスペースがある。デザインの中心的な基本原理は、バランス、コントラスト、リズム、動き、および反復である。
デザインの中心的な諸要素や基本原理と知覚的認識との関係は、明確である。こうした要素や基本原理を学ぶためには、生徒は知覚的認識の発達に必要とされるのと同じ種類の活動を行なわなければならない。芸術教育の観察技術の発達に対する効果は特に明白である。子供たちは、色や質感を観察するのに自分たちの視覚と触覚を使う。ライン、形、スペースの諸要素を教えることで、空間的関係の理解が発達する。コントラストの基本原理を教える中で、同一性と相違性を観察する作業が分類計画の理解の始まりになる。デザインの他の要素や基本原理と知覚的認識との関係についても、同様のことが言える。
以下に挙げる、環境を学ぶことで得られる典型的な成果は、芸術教育が環境倫理の向上や市民活動技能の習得に大きな役割を果たしていることを示している。環境問題の解決に果たす芸術の役割もまた、明らかである。
生徒は、芸術教育を通して以下の能力を身につけるようになる。
・ 自分たちの回りの環境と他の環境とを質的に比較できるようになる。
・ 環境の質に対する人間の感覚と評価が、様々な種類の芸術の実践を通して強化されることがわかる。
・ 人間によって作られた環境の人間性に寄与する効果と人間性を奪う効果とを比較対照する。
・ 自分たちが環境に影響を与え、環境から影響を受け、環境に責任を持つのだという感覚を養う。
・ 芸術が自然環境や作られた環境の美的認識や感受性に対して直接どのように役立つかを説明する。
・ 芸術によって育成された美的概念に基づいて環境に関する決定を行なう。
・ 芸術が、芸術家の経験、文化、および環境を反映していることがわかる。
・ 他者が適切なデザインを使うよう影響力を行使することによって環境によい影響をあたえる責任が自分たちにあることを認識する。

 

 

 

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